オープン外構とセットバックの関係
宅地には様々な条件や制限がある場合も多いですが、施主を悩ませる問題の中で多い1つに「セットバック」があります。
自分の土地なのに自由に使えないなんて・・・
このコラムは、「セットバックに納得の上でエクステリアをあきらめない」気持ちを持って頂ければと思いながら書いて行きます。
◇セットバックとは |
セットバックとは
セットバックとは、建物を前面道路から後退させて建築することを言います。道路に面する土地に構造物を制限して前面道路の幅員を確保するために、建築基準法で定められています。
※幅員:端から端の幅のこと。「員」という漢字には「かず」や「すうじ」の他「はば」や「まわり」と意味もある。
前面道路が幅員4m未満の場合は、新たに建築する場合セットバックが必要になります。中古物件などでセットバックせずに建てられているものは現在でも多くありますが、建築基準法が施行された1950(昭和25)年11月23日以前に完成したか、建築基準法を守っていないかのどちらかと言うことになります。
対面に何があるかでセットバック距離の取り方が変わります。
例えば、自身の土地が宅地で道路の反対側も宅地の場合は、道路中心線から2mまでセットバックしなければなりません(セットバックの負担を折半)。
しかし、道路の反対側が川・崖や線路などの場合は建物は建てられないため、道路反対側の境界線から4mまでセットバックしなければなりません。
日本の土地の今昔
日本の土地は明治時代以降、誰しもが土地を所有できるようになったことで現代の狭小地が生まれ始めました。
どういうことかと言うと、税金の納め方が変わりそれまで土地耕作者が納めていた税金(年貢)を、土地所有者が納めるお金(固定資産税)、つまり物納から金納に変わり、固定資産税を払えない者は土地を手放すようになりました。
また江戸時代は年貢を免除されていた武家地や町地も課税対象になり、明治維新で突然武士ではなくなった元武士たちは固定資産税を納められず屋敷を手放さざるを得なかった背景もあります。
更に、家長制の衰退とともに相続問題が起こりやすくなり、財産分与で土地の分筆(土地の単位は「筆」と呼びます)が行われるようになったことが更に狭小地を生み出していきました。
セットバックの理由
さて、セットバックの話に歴史がどうかかわるんだい?とお思いの頃だと思いますが、現代の法律にセットバックが生まれたのには、土地が細切れになったことも深く関係しているのです。
分譲地:広大な土地をディベロッパーなどが購入し、開発・分筆して売り出される
土地を繰り返し分筆するといつか、道がなく土地に入れなかったり通行が不便になったりする場所が生まれます。そこに路地や私道ができ、狭い道が生まれます。また江戸時代に長屋だった場所は元々路地が狭いですから、建物を建て替えても路地は狭いままです。
昔は何でも人力で問題なかったのかもしれませんが、現代はどうでしょうか?
緊急の際、救急車や消防車が通れない道が沢山あります。そういう道を無くすために緊急車両が通れる幅員4mを確保する必要があり、そのため現建築基準法では道路幅が4mに満たない場合はセットバックをするよう義務付けているのです。
そして、建築基準法の基準を満たさない土地は「再建築不可」となり、更地にすると新しい建物は建てられません。
※再建築不可の基準はいくつかあります。
全ての道が幅員4m以上になる日はいつか来るのか・・・?いったん全てを都市開発計画で見直さない限りは難しいと筆者は考えていますが、それはそれで、日本の古くから培ってきた歴史を一旦ぶった切ることになるので、、、難しい問題です。
セットバックと土地
さて、セットバックが必要と言うことは前面道路が狭いと言う事ですが、上記を読めばわかるように、狭い道路でセットバックが必要な土地は狭小地の場合が多いです。
そうなるとセットバックは痛い。何せセットバック範囲には構造物を造れないですから、フェンスの端っこですらはみ出すことができません。
そうすると自ずと、セットバック要の土地はオープン外構にするしかなくなってきます。敷地境界から建物までのスペースが狭くなってしまうからです。
ですが、「街の安全確保のため」とはわかっていても「自分の土地なのに有効面積が狭くなる」と言う感情はどうしてもせめぎあってしまうものですよね。
外構はセットバックしても美しく造れる
せっかく住まいを所有するのに、セットバックが必要な狭小地だから美しく造り込めない・・・とあきらめてしまう前に。
近年エクステリアアイテムは非常に充実していますので、諦めず外構専門会社に相談してみてください。
あなたのお住まいに合ったエクステリアを造り込む方法が見つかるかもしれません。
次の項で、アプローチをあまり取れないタイプのエクステリア事例をいくつかご紹介します。
前庭なしのエクステリア例
スタンプコンクリートで雰囲気一新!門周りもすっきりとリノベーション
町家のような「玄関を出たら即道路」とまではいきませんが、玄関ポーチを降りたら1歩で道路の事例です。
Before |
Before |
After |
元々の門柱の幅が圧迫感を生んでいたため植栽で解放感を出し、反対側に機能門柱を付けることで敷地境界を印象づけるデザインに。
スタンプコンクリートで地面から印象を一新しました。
詳細は こちら
シンプルモダンなすっきりセミクローズ外構
アプローチは玄関ポーチから数段のステップのみ。
建物がモノトーンのモダンスタイルなので、合わせてすっきりとしたシンプル&クールな外構にしました。
詳細は こちら
◇エクステリアメーカー・タカショーさんの施工事例より
アプローチが短くてもフレーム使いでエントランス演出 |
玄関ドアを門柱で目隠ししつつ、植栽で温かみを演出 |
玄関へのアプローチの正面ずらしとライトアップで効果的 |
まとめ:外構単体として考えない
外構を単体で考えると、門柱・門扉、塀・フェンス・・・など必要なものばかりを考えてしまいがちですが、エクステリアは建物とのトータルバランスがとても重要です。
敷地の制限・建物と併せて外構を考えれば、不要なものをそぎ落としいかにマッチした「エクステリア空間になるか」の観点で造り込みができるはずですよ。
そして、セットバックひとつを取っても「エクステリアが街並みをつくる」と言う事が本当なんだなと、書きながら実感させられる内容でした。
★この記事を読んで
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