京都を代表するエクステリア “格子”
京都で暮らしていると、縦格子は“よく見かける”どころではなく「格子があるのが当たり前」のレベルでそこ此処に用いられています。これ、実は先日のコラム「京都のエクステリア・外構と街並みのつながり」とも関係があります。
景観地区の分類中に「旧市街地型美観地区」というものがあり、
「歴史的市街地内において,生活の中から生み出された特徴ある形態意匠を有する建築物が存し,趣のある町並みの景観を形成している地域」
とされています。
京都の市街地に格子が多いのは、これを維持するため意匠上デザインの規制があり、格子が好都合なためと言えるかと思います。
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京都における格子の変遷
寝殿造りの蔀戸(しとみど)/大覚寺 宸殿
出典:ブロガーさんサイト「ORANGE PEPPER」
平安時代の寝殿造りでは、碁盤目状の桟に板を貼った戸を「格子」と呼んでいたようです。
室町時代に桟に隙間がある開口部が生まれ、桃山期の「洛中洛外図」を見ると荒く縦横に組まれた固定式の組子が町家の標準仕様だった様子が描かれています。
この頃は物騒な時代であり、防犯上の理由で固定式の格子を備えるようになったとされています。
洛中洛外図屏風(舟木本):景観の情況から元和初年(1615)頃の作とされている。
出典:東京国立博物館WEBサイト
研究情報アーカイブズは こちら
江戸時代になると、格子の制作技術の向上によりより細く綿密な格子が主流になりました。人口増加で高密化する街の視線制御効果が有用で、その後も格子の発達が進んだ要因と考えられます。
江戸中期頃には町家の開口は目の細かい縦格子にほぼ統一され、現代の私たちがイメージする町家意匠の流れができあがりました。それ以降は明治に至るまで、町家の「エクステリア」画一化と格子の繊細化が進みました。
京都の現代における格子
前述の「旧市街地型美観地区」ですが、実は格子を義務付ける内容はほとんどありません。ですが、守らなければならないデザイン上の規制を考えると、格子が非常に有用で扱いやすいと言えるかと思います。
例えば、町家で道路に面してバルコニーを設置する場合はインナーバルコニーにしなければならず、更に手摺面は外壁と違うデザインにしなければなりません。更に軒庇よりバルコニーが突出するのはNGで、ボリューム感が立たないようデザインをしなければいけません。
そうなると、京の町家で長年自然と用いられてきた格子が、意匠上の京都らしさの表現だけでなく規制のクリアには好都合なのです。
現代では和洋限定せず目隠しやデザインで縦ルーバーを使う事は多くありますが、京都の暮らしの中で古くから発展してきた「格子」の街並みは、まさに意匠性・機能性を備えた京都生まれの万能エクステリア・マテリアルと呼べるのではないでしょうか。
京都の格子活用例
京都の町を歩くと、格子は様々な形でアレンジされ、美しく建物と街並みを繋いでいます。
格子は開口部のみにとどまらず、外壁全体に格子柄を用いていたり、格子を見る角度を利用して絵柄を演出したりするデザインもあります。
◇バルコニーの手摺面が格子の京町家
「旧市街地型美観地区」の京町家は前述の通り、バルコニーのデザインに注意が必要です。
こちらの町家は手摺面前面が格子で造られています。
◇ライオンズ京都御所南レジデンス
RC造の重厚感を感じさせないよう、格子の活用で外壁の存在感を軽減したデザイン。
2023年グッドデザイン賞を受賞されています。
◇K8ビル
木屋町通に建つ、前面マテリアルが木製ルーバーのビル。
建築から10年ほどが経ち、経年による格子の変化が京都らしく存在感を放っています。
木屋町通りはあまり建物に京都らしさがある街並みとは言えませんが、隣の筋の先斗町のように規制が無いために建てることができたビルだと言えます。
現在のK8ビル
まとめ
格子の魅力、もっと知りたくなりましたね。
目隠しとして、エクステリアのアクセントとして、各メーカーさんの様々な格子がありますので、ちょっとしたリフォームなどでも取り入れてみてはいかがでしょうか?
格子を使いたいけど、どこにどんな格子を選べば?など、ちょっとしたご相談でもぜひお気軽にお問合せください★
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