ブロック塀とフェンス 美しく安全な暮らしの外郭

オープン外構が人気の近年、暮らしの様子が外から見えすぎたり隣家と目線が被ることを防ぐ目的から「目隠し」需要が高まっているようです。

 


 ★CONTENTS★

 ◇塀はそもそも
  ・古代~中世にかけての塀

 ◇現代の塀の建築基準
  ・「塀の安全性」の重要さ
  ・近年の敷地境界・防犯はフェンスが主流
  ・フェンスの需要とその目的

 ◇まとめ

 

塀はそもそも

吉野ケ里遺跡

日本の古代で見られる塀としては、吉野ケ里遺跡などで復元されていますが背の高い木の塀があります。集落を守るための防護として設置されたと考えられます。

アフリカのマサイ族の住居は木の枝でつくった柵で囲まれており、まさに塀の原型と言えるのではないでしょうか。

 

◇古代~中世においての塀

原始時代からあった塀ですが、時代とともに頑丈な塀に変化していきました。

平城宮の塀について、平城京に遷都して1年半後に「宮垣未だ、ならず」と記した記録があるそうです。
この塀は前身・藤原京の藤原宮につくられた塀とは構造・施工方法が違ったようで、型枠を組み土を突き固めて3.8mほどにまで高さを出しました。藤原宮の塀は掘立柱(穴を掘って柱を立てる)でつくられていたので、手間も時間も頑丈さも、何もかもが大きく異なったのです。

平城宮の塀建設
出展:奈良文化財研究所/なぶんけんブログ
平城宮の塀工事の様子を描いたイラスト

 

過去のコラム「オープン外構とクローズ外構 - どっちがいいの?」でも触れましたが、「外構」とは元々武家屋敷の門・塀・垣などの配置・構造の事を指す「外構え」からきており、「侵入者を防ぎ、敵から守る」事が目的でした。現代のように「目隠し」「敷地境界」と言う意味合いはなかったと言えるのではないかと思います。

そうなると、大事なのは「侵入されないこと=高さ・頑丈さ」となって来るでしょう。

 

安土桃山時代が近づく室町時代終期、室町幕府は衰退し御所の塀も直すことができなかったと言います。そしてその塀は織田信長が直したのです。

「塀」が幕府の衰退・次世代の有力者を物語るとは何とも、物悲しさや「力=財力」の感じを受けますが、「何かを欲する<何かを得る<得たものを守る」この図式を考えればあながち「力=財力」は間違いではなく、=イコールと言うよりは「財力は力の要素の一つ」と言えるのでしょう。

戦国時代初期の武士の山城は、江戸時代に近づくごとに有力大名であればあるほど深い堀や頑丈な石垣・塀で本丸を守る構造になります。
そのような城を建てるためには、大変な財力が必要でそれが伴わなければ建築は難しかったのです。

 

それだけ、塀は中世において権力の象徴と言えたわけですね。

狭間がある塀
とある城下の塀。
狭間(さま:相手に侵入されず攻撃ができるぎりぎりの壁穴)がかなり深そうで、塀の厚みがわかります

 

現代の塀の建築基準

境界ブロック

現代においての塀は、個人が土地を所有することができるようになった明治時代以降、隣地境界・敷地を示すものと言う概念が加わり、防犯の面では“敵”が“泥棒”に替わりました。

そこで江戸時代までのような強固な塀ではなく施工性の良さが重視されていったのでしょう、塀を造るための様々な建材や施工方法が発展していきました。その中で建築基準が適宜改善されて行き、現行の建築基準法は昭和56年施行の法律です。

レンガの塀
幕末から西洋化の中で多くつくられたレンガの塀
レンガ建築は関東大震災での倒壊が多く「地震に弱い」として造られなくなっていきました。

 

◇「塀の安全性」の重要さ

数年前、地震によるブロック塀の倒壊で尊い命が犠牲になった事件がありましたが、あの事故の原因は自治体の事故調査委員会による調査で、ブロック塀の施工不良だったと発表されました。

後の点検意識の低さも原因となり起こった人災だったと言えます。

高槻市学校ブロック塀地震事故調査委員会の調査報告をもとに日経アーキテクチュアが作成した図
出展:日経クロステック高槻市学校ブロック塀地震事故調査委員会の調査報告を
もとに日経アーキテクチュアが作成した現場断面図

 

当該ブロック塀は1974年に建設されたようで、当時は旧建築基準法の時代です。
適切な点検等が行われていれば、現行の建築基準法に則した塀に直す機会もあったでしょうが、それも行われていなかったようです。

またそれ以前に、中の鉄筋が溶接されず造られていたり補強の控え壁もなかったりと、そもそもの問題も多かったようです。

 

建築基準法は安全を担保するための最低限の法律であり、必ず守らなければ建築はできません。しかし過去を振り返れば、建築確認申請の確認が甘かったり建築中の中間検査が無かったり、きちんと法律が守られていない時代があったのです。

さらに建築をとりまく環境・条件は建築物11つで異なるため、建築基準法を守れば絶対に大丈夫とも言い切れず、現代ではPCの進歩とともに構造計算の技術が発達し、建築や製品開発分野で発揮されています。

 

◇近年の敷地境界・防犯はフェンスが主流

昔ながらのブロック塀

ブロック塀は頑丈に見えますが、正しい施工・点検保全が行われていなければ凶器になり得ることがはっきりと認識された今、住宅のみならずランドスケープの分野でも近年は「フェンス」が活用されています。

倒壊寸前のブロック塀
倒壊寸前の危険なブロック塀
適切な保全・修繕は所有者の義務です。

 

フェンスと一言で言っても、現在では様々な形状・デザインの製品が開発されており、ニーズに合わせたフェンスを選ぶことが可能です。

塀と大きく違うのは、「塀に比べてとても軽量」「施工期間が短い」「デザインが豊富」な点でしょう。ブロック基礎ではなく独立基礎のフェンスは2.2mを超える高さでも設置ができるため、環境・場所によっては非常に有用です。

フェンス

 

また、フェンスは隙間があり向こう側を見通せる(デザイン・構造による)のが防犯上のメリットになります。侵入された場合でも身を隠せる場所がないことは、防犯対策には非常に重要だからです。
縦桟のフェンスは足をかけられないため侵入防止にもなります。

 

さらに外構・エクステリアは街並みを形成する重要な要素であるため、デザインの豊富さは住宅・ランドスケープどちらにも大変重宝するポイントになります。

京都市内のとあるフェンス

 

◇フェンスの需要とその目的

安全性・デザイン性の両方に優れるフェンスですが、冒頭の通り目隠しとしての需要が大変高まっています。独自に理由を考えてみたのですが、

 ・WebサイトやSNSの広がりで、プライベートを隠す必要性が高まった
 ・住宅街が観光地に含まれている場合、観光客からの目線隠し
 ・隣家や近隣との関係性の希薄化
 ・犯罪の増加(これに関しては昔より、単純に情報を得やすくなっただけとも言えるかもしれない)

これらが主な理由になっているのではないかと感じます。
そして「目隠し」を理由に強固な塀を建てるのも費用的・印象的に気が引ける、と言う日本らしい感性が働いているような気がします。

三協アルミ/クロススタイル
三協アルミ/フェンス シャトレナⅡ

 

まとめ

これまでの印象を大きく変えず目的を果たすことができる「フェンス」ですが、この春に各メーカーから新商品の発売もありました。
日本でのフェンスの存在意義は、上記のような日本らしい側面にもあるため選び方は重要です。

フェンス探しを検討される方は、ぜひ当社にご相談ください。

 

 

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