お庭管理の上で関わる法律、今一度確認!
ガーデニングは、植物を育成・愛でる楽しさや、植物・自然の魅力を暮らしに与えてくれる、楽しいものですね。
ですが、庭木など大きく育ち選定が必要な植物や、雑草、地下茎で増える植物など、周辺環境に影響する要因がたくさんあるのが事実です。
過去のコラムでも書いていますが、エクステリアというのは街づくりの要素でもあるため、自宅だけガーデンニングを楽しめればそれで良いとはいかないですね。
では、現実に庭の管理について、法律はどのようになっているのでしょうか?
◇民法においての庭関連規定 ◇まとめ |
民法においての庭関連規定
建築関係のトラブルになりがちなたくさんのことが、建築基準法や民法で決められています。
細かい部分までを説明するには数日あっても足りませんので、今回は特にエクステリア全体の中から「庭」関係、とりわけ隣地との関わりに絞って説明したいと思います。
電線まで登る植物の蔓
火事が起こった例もあるためきちんと管理をしましょう
まず、家を建てる時は土地を買うか借りるかのどちらかの方法を取ることになりますが、大半の人は購入して「所有権」を持って建築を行うでしょう。
この土地「所有権」について、確かに所有権を持つとその土地の持ち主になるのですが、民法第206条で「所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。」と定められています。
この法令の制限内においてとは何か、と言うことですが、民法では「相隣規定」というものがあり、【自分の土地とは言え周囲に迷惑をかけるような使い方はできない】ということが206条の後に規定されているのです。
つまりは、隣近所との関係、とりわけ、隣り合った土地と土地の関係について規定をしているという事ですね。
隣り合う土地所有者の関係・対処等については、「第二款 相隣関係(209条以下)」で詳しく定められています。詳しく見ていきましょう。
自分の庭にお隣の木が・・・/民法 第二款 相隣関係
民法209条では4項に渡って「隣地の使用」について定めています。
内容を具体的に見ると、「目的を果たすのに必要な範囲内で隣地を使用することができるが、事前に隣地所有者・使用者に通知しておいてくださいね。損害を発生させたら償金を請求されますよ」と言う内容が書かれています。
では隣地使用の目的は何が許されているのかと言うと、「壁や工作物の建築・収去・修繕」「境界標の調査又は境界に関する測量」と、「枝の切り取り」です。「枝の切り取り」は233条第3項の規定によるとありますので、そちらも見て見ましょう。
境界標
まず、自分の土地に隣家の植物がせり出してきたとき、自分で勝手に切って良いのか、の話ですが、これは条件があります。
233条第1項で「隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。」と規定されていますので、「隣の枝が境界線を越えてうちまで伸びてきた!よし、切ってやる!」はできないことがわかりますね。
ではどうしたら良いのか?
・隣地所有者、使用者に切ってもらうよう言ったが、いつまで経ってもやってくれない
・所有者、使用者がわからない
・緊急に切らなければならない事情がある
この3つの場合は自分で切ることができます。そして“隣地使用”の話ですから「お宅頼んでからいくら待ってもやってくんないから、お宅の庭に入って自分で切るよ~」と事前に通知して隣地に入って目的を果たすことが許される、と言うことなのですね。
ただし注意すべき点は、撤去して良いのは「自分の敷地内に侵入している部分のみ」であることです。
自分の庭から切って撤去までが完了できるのであれば、わざわざ隣地に入る必要はありません。ただし隣地内からでないと角度的に剪定が難しいとか、自分の庭に剪定のためのスペースや道具がないなどで隣地に入って作業をするとしても、あくまでも自分の庭に侵入している部分しか切ってはいけません。
間違えても根こそぎ引っこ抜いたり主幹から切り倒したりしないようにしてください。
そもそもこんな面倒ごとは、お隣と絶対起こしたくないですよね。ご自分のお庭の植栽は、「切除させられる」前に常に手入れをしておきましょう。
ちなみに、根っこが越境してきたら、それは自分で切ってもOKです。
民法233条2項「隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。」
ただ、切る根っこによっては植物の維持管理に影響がある可能性がありますので、切る前に隣家の方に一言伝えたほうが無難でしょう。
隣地を通ってうちの敷地を水路が横切ってる!
分譲地など住宅地として開発された場所ではなかなかとらないと思いますが、こう言うケース、地方に行けば意外とあります。
「庭に水が流れてるの嫌」と思うかもしれませんが、その水路をいじるのはやめてくださいね。。。
と言うのも、自然に流れてくる水流と言うのは、雨や雪解けなどの排水のために地形に従って流れてくるものです。ですので隣地の排水を妨害してはならない、という事ですね。また、何かしらの対策を講じるように隣地に求めたり、被った損害の賠償の支払いを求めることもできません。
<民法>
第214条 土地の所有者は、隣地から水が自然に流れて来るのを妨げてはならない。
第219条 溝、堀その他の水流地の所有者は、対岸の土地が他人の所有に属するときは、その水路又は幅員を変更してはならない。
219条では、水路の対岸が隣地の場合は、水路自体や幅を変えたりしてはならないとしています。いつの間にか水路の形が変わったり幅が細くなったりしたら、対岸のお宅としてはあふれたりしみ出したり崩れたりしないか不安ですよね。
両岸とも自分の敷地内なら問題ありませんが、災害時や不測の事態の際にどうすれば良いかは、様々規定がありますので民法222条までをご確認ください。
大分、天領日田(豆田町)の水路
出展:癒し憩い画像データベース
オープンガーデン
法律の話から離れますが、お庭とまちづくりの関係が密接である事例として、オープンガーデンについてご紹介します。
オープンガーデンとは言葉通り庭を公開することで、1927年にイギリスで始まりました。
対象の庭は、一般宅や施設、コミュニティーエリアなどで、イギリスで始められた頃のオープンガーデンの目的はチャリティだったようです。
庭を見に来た人々から入園料を集め、それを慈善団体に寄付するというものです。
現在ではニュージーランド、オーストラリア、カナダなどの住みよい環境が多い国を中心に、オープンガーデンは世界で広がっています。
チャリティで行うのはもちろん、入場料は取らずに庭づくりを通じて地域のコミュニケーションや町おこしとしての開催など、目的は多岐に渡っています。
京都府内でも、自治体を上げて活発に実施している「オープンガーデンかめおか/亀岡市」や、地域の個人宅が有志で行っている京丹後市大宮町奥大野の「京丹後オープンガーデン/京丹後・大宮南情報サイト」などのオープンガーデンが開催されています。
ガーデニングが好きな方が思い思いに各お庭を楽しんだり、そんな中で生まれる地域の方々同士のコミュニケーション、そして地域住民参加の緑あふれる街づくり推進や観光拠点としての発展など、お庭の魅力を活かした活動として受け入れられています。
オープンガーデン亀岡
(今年の開催は終了しています)
京都市や宇治市のような大きな街では、なかなか個人宅の庭を回るというのも様々に難しさは感じますが、個人的には大小さまざまな寺社仏閣や公園・観光施設や美術館などがまとまってお庭周遊オープンガーデンなどが行われたら、京都全体でとてつもなく大規模で素敵なチャリティオープンガーデンができそうですよね。
毎年定期的に恒久的に開催すれば、財政や職人減少問題などにも需要や費用の面で効果的なように思います。
こういうことの為に観光産業があるわけで、クラファンよりよっぽど効率的だと考えるのですが。。。
このコラムを読んでくださっている皆様はどう思われますか?
まとめ
お庭が街づくりに関わるポイントは、こうして考えてみるととても多く、そして非常に重要であることが見えてきますね。
京都と言う、日本の歴史・文化・美しさがたくさん詰まったこの都市で、お庭の魅力を共有できたら素晴らしいですね。
当社も地域社会の一員として信頼に応え続けると言う経営理念を持っています。何ができるのか、何からやっていけば良いのか、考え続けていきたいと思います。